GDPとは
GDPとは、「Gross Domestic Product」の略で、日本語では「国内総生産」と言い、
「一定期間内に国内で生み出された付加価値の総額」
のことです。
ここで言う付加価値は、次の計算式で表されます。
付加価値=生産額-中間投入額
この式における生産額というのは、生産した製品の価格、販売した商品の価格、サービスの価格といったものが入ります。
中間投入額は、生産に使用した原材料、部品、燃料、サービス等が入ります。
GDPは国内の市場取引を対象としています。
ですので、外国籍の人や外資の在日支社等の生産した付加価値も対象となります。
逆に、日本人が外国に居住して生産した付加価値やや日本の会社の在外支社等で生産した付加価値は対象となりません。
また、家事やボランティアは、市場で取引されるものではないですし、古美術等はGDP算出期間外に生産されたものなので、対象とはなりません。
それと、株や不動産の投資による収入(キャピタルゲイン)は、付加価値が生産されたわけではなく、単に価格の上下により得られただけなので、GDPの対象外です。
例外的に、帰属家賃は市場取引ではないにもかかわらず対象となっています。
帰属家賃とは、自分の家を自分に貸した場合に、自分(借り手)で自分(貸し手)に支払う家賃のことで、実際に支払われていないものですから、市場の賃貸料から推定された金額をGDPに計上します。
どうして、このようなことをするのかというと、賃貸物件から持ち家に移り住む場合やその逆の場合で、GDPが増減しないようにするためです。
また、GDPの国際比較をする際に、持ち家比率の高い国と持ち家比率の低い国を比較した場合、賃貸住宅の家賃の多い少ないによってGDPが増減するということをなくすためだそうです。
三面等価の原則
前述の説明はGDPを生産面から見たものですが、GDPは生産面だけでなく、分配面(所得)、支出面の3面でみます。
分配面から見たGDPと支出面から見たGDPは、次のような式で表されます。
GDP(分配面)=雇用者所得+営業余剰・混合所得+固定資本減耗+間接税-補助金
GDP(支出面)=民間最終消費支出+政府最終消費支出+総固定資本形成+在庫増加+輸出-輸入
これら3面から見た時の、それぞれのGDPは同じ額になります。
これを「三面等価の原則」と言います。
上記の式にある項目が何を表しているのかについては、ここでは説明を省きますが、
三面等価の原則は、簡単に言うと、
ある価格の売り物(生産面)を誰かがお金を支払って買う(支出面)と、その支払額が誰かの所得(分配面)となり、それぞれの金額は同じになる。
ということです。
GDPには種類がある
GDPには、実際の生産額、中間投資額で計算されたGDPとして名目GDPと実質GDPの2種類があります。
他に、GDPギャップというものを求めるときに使用する、潜在GDPというのもあります。
それぞれどんなものなのか、以下に説明します。
名目GDP
名目GDPとは、市場価格に基づいて計算されたGDPです。
ですから、名目GDPには物価変動が反映されています。
なので、名目GDPは対象期間内に取引された金額について評価するものになります。
実質GDP
実質GDPとは、名目GDPから物価変動の影響を取り除いたものです。
名目GDPは物価変動を反映しますから、インフレにより物価が上昇すると、商品の取引数量は同じでもGDPは上昇します。
このように名目GDPでは物価変動のみで上下してしまいます。
ですので、名目GDPから物価変動の影響を取り除いた実質GDPにより、商品の取引数量による評価をするということです。
潜在GDP
潜在GDPは、GDPギャップを求めるときに使用されます。
GDPギャップとは、総需要(現実のGDP)と供給能力(潜在GDP)との乖離を表したものです。
潜在GDPには、「平均概念」に基づいたものと「最大概念」に基づいたものがあります。
平均概念に基づく潜在GDPは、過去の平均的水準の資本や労働力などの生産要素を投入した場合に推計されるGDPで、
最大概念に基づく潜在GDPは、資本や労働力などの生産要素を最大限投入した場合に推計されるGDPです。
平均概念の潜在GDPを用いたGDPギャップの場合は、
GDPギャップ=(実際のGDP-潜在GDP)/潜在GDP
という式で、
最大概念の潜在GDPを用いたGDPギャップの場合は、
GDPギャップ=実際のGDP-潜在GDP
という式で表されます。
(現在の日本政府、日本銀行は平均概念の潜在GDPを使用しています。)
平均概念では投入される資本や労働力は過去の平均値であり、最大概念はその時の最大値であるので、平均概念の潜在GDPは循環変動の影響を受けますが、最大概念の潜在GDPは循環変動の影響を受けません。
(循環変動とは、景気変動のように周期は一定ではないけれど周期的に繰り返される変動のことです。)
ということは、平均概念の潜在GDPは大きなショック(大災害やリーマンショック等)があると、それが最大生産能力に変化を及ぼさない場合にも影響を受けます。
また、平均概念はあくまでも過去の平均値を使用するので、今の潜在的供給能力(ポテンシャル)を表してはいません。
ですので、平均概念の潜在GDPを用いたGDPギャップの場合、絶対的な水準より時系列変化をみるのに適しています。
これらのことから、平均概念の場合は、潜在GDPというより平均GDPと言った方が適切だと思われますし、「潜在」という言葉の意味からすると潜在GDPは最大概念の方が当てはまると思われます。
(2001年の中央省庁再編前まで存在した経済企画庁では平均GDPと呼んでいたようです。)
最大概念の潜在GDPを使用する場合では、GDPギャップはその計算式から0かマイナスの値をとることになります。
これは、供給能力以上に需要があるとしても、実際には商品が足りないのですから、存在しない商品を消費者は買うことはできないので、実際のGDPに供給能力を超過する需要を反映することができないからです。
この場合のGDPギャップは、マイナスの値が大きくなると、供給能力が余った状態であり、稼働していない設備があったり失業者が増えたりしている不況と判断できます。
逆にマイナスの値が小さくなると、設備の稼働率が上がり失業者も減っている好況と判断できます。
このことから、最大概念の潜在GDPを用いたGDPギャップは、景気の指標となります。