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国債は単なる借金なのか

ここ10年とか20年とか、日本は財政破綻すると言われ続けています。

それは、国債の発行残高が多くなりすぎているから。

つまり、借金が多くなりすぎて返せなくなる、いわゆるデフォルト(債務不履行)になるということです。









でも、現状では、日本に財政破綻しそうで危ない国に見られるような兆候(金利の急上昇、過度のインフレ、慢性的な経常赤字)は全くありません。

どうしてでしょうか。









その理由は、簡単に言うと日本政府の発行している国債は自国通貨建て(日本円で借りて日本円で返す)のみで、日本円を発行できる日本政府が、日本円の借金を返せないとは考えられないからです。(日本政府が故意に返さないと決めれば別ですが。)

財務省の見解も「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。」となっています。「財務省 外国格付け会社宛意見書」と検索していただければ、その文書が見つかります。









「でも、借金には間違いないんだから、無限に増やすわけにはいかないんじゃない。」









もちろん、無限に増やすわけではなく、過度のインフレにならないように調整する必要があります。

ですが、インフレを恐れるあまり、国債を発行しないで、どんどん償還(返済)していくと、いずれ経済成長しなくなり、国民は貧しくなっていきます。









なぜなら、国債を発行するということは、単に借金をするということではなく、通貨を発行するということですから。









「国債を発行して借金することが通貨を発行すること? え~っと、何を言ってるのか意味がわからない。」

という方は多いかと思います。









なぜ国債発行が通貨発行になるのかは、次に説明する国債発行による政府の財政支出のプロセスを見ていただくことで、理解しやすくなると思います。









国債発行による政府の財政支出のプロセス

例として、民間企業(以下、請負企業と言う。)に1000万円の公共事業を依頼し、支払う代金は国債発行のみで賄うとします。









1.まず政府は国債を発行し、市中銀行(街中にある一般的な銀行のこと)に買ってもらいます。

このときの国債購入の代金は、市中銀行が日本銀行(以下、日銀と言う。)に持っている当座預金(以下、日銀当座預金と言う。)から支払われます。









     国債1000万円
       →
政府           市中銀行
       ←
   日銀当座預金1000万円









この取引の仕訳は、政府と市中銀行、それぞれ図1のようになります。





図1 国債発行時の仕訳








2.次に、政府は国債発行で得た日銀当座預金から、公共事業を請け負った企業に代金を支払います。

支払いは現金ではなく、財務省の官庁会計システム「ADAMS 2」(本来、「2」はギリシャ数字で表記されています。)と日銀が連携し、代金を請負企業の銀行口座に振り込むよう、請負企業が口座を持つ市中銀行へ指示します。









    支払指示      代金振込
政府   →   市中銀行   →   請負業者









3.日銀は上記2.と同時に、請負企業へ代金を振り込んだ市中銀行には、その代金分の政府の日銀当座預金を、その市中銀行の日銀当座預金へ振り替えます。









    日銀当座預金
政府    →    市中銀行









上記2.と3.のプロセスの仕訳は、政府、市中銀行、請負企業、日銀、それぞれ図2のようになります。

(ここでは政府の仕訳において、勘定科目を単純に「公共事業費」としました。事業によって勘定科目は変わるかと思いますが、ここではそれほど細かく考える必要はないので、あまり気にしないでください。請負企業の勘定科目においても同様で、「売上」でも「売掛金」でも、今の場合どちらでも支障はありません。)





図2 公共事業費支払時の仕訳




※図1と図2の市中銀行は同じとは限りませんが、ここではマクロに見ていますので、国債を購入した銀行と請負企業に振り込みをした銀行の区別はしておりません。









以上が、国債を発行して政府が財政支出をするプロセスです。









国債発行は通貨発行だった

上記のプロセスの後、残ったものは何でしょうか。

政府には負債としての国債、市中銀行には資産(債権)としての国債、そして請負企業には預金が残りました。

これをバランスシートで表すと、図3のようになります。





図3 公共事業費支払後のバランスシート








政府が国債を発行して財政支出を行うと、民間のお金が増えるということが、ご理解いただけましたか。

今年、新型コロナウイルスの影響緩和のための経済対策として、1人10万円が配られたのも、同様のプロセスで支払われていますので、実感していただきやすいかもしれません。









税金で国債を償還 = 国民のお金を減らす

さて、ここで、よ~く考えてみてください。

国債を発行し政府が支出することで民間のお金が増えるということは、その逆の税金で国債を償還するということは、国債発行で増えた民間のお金を減らすということになりませんか。

どうでしょうか?









そこで、税金で国債を償還する際の仕訳を考えてみます。









国債の取引には日銀当座預金が使われますので、図4のようになります。(勘定科目の「税金」については便宜上こうしただけで、本当の勘定科目はわかりませんが、特に問題ないと思います。)





図4 国債償還時の仕訳








この仕訳では政府の徴収した税金が減り、市中銀行の日銀当座預金が増えました。

こうなると市中銀行に日銀当座預金が増えたということで、国民のお金が減っていると言えないように見えます。









ただ、ここで問題なのは、日銀当座預金は日銀に口座を持っている者同士でしか取引できないことです。

つまり、日銀当座預金のままでは民間人や一般の民間法人と取引できるお金とはなりません。









個人向け国債もありますが、国債の保有者の割合の多くは、日銀、市中銀行、生損保等、で、これらの保有割合は約80%、あと公的年金、年金基金、海外と続き、家計は1%程度です。

なので、国債を償還しても民間に直接お金が戻るから大丈夫とは言いがたいでしょう。









国債の償還とは違いますが、現在、金融緩和政策として日銀が市中銀行等からたくさんの国債を買い取り、市中銀行等の日銀当座預金はかなり増えています。

ですが、それによって別に民間に資金があふれることもなく、日銀が目標としていたインフレ率2%に達する気配はありません。









この状況からも、お分かりいただけると思いますが、市中銀行等の日銀当座預金が増えただけでは民間に資金は流れていきません。









これが現実に起こっていることです。

ですので、これらのことから国債を償還することによって国民のお金が減ると言えます。









実際に民間に流れるお金が増えるのは、政府が国債を発行して支出するか、誰かが銀行から融資を受けて投資をするかしかありません。

民間に流れるお金の量が増えないと、国民の給料は上がりませんから、需要は増えません。









なので、外国で経済成長をまともにしている国は、国債を発行し国内に流れるお金の量を増やし、国民の所得が上がる政策をとっています。









そうした外国と同様の政策を日本はとれるにもかかわらず、PB(プライマリーバランス)黒字化と言って財政再建を目指して、全くやっていません。

逆に財政健全化のために公共投資を減らし消費税等の増税をして、国民のお金を減らしています。









これらのことから、現在の日本においては、政府は国債を発行していますが、発行額が足りていないので、国内需要の喚起に結びついていないという状況だと考えられます。

OECD47か国中、2019年の実質経済成長率0.7%の42位、200~2019年度の20年間の実質経済成長率の平均が0.84%と経済成長が停滞している現状が、その証拠なのではないでしょうか。









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